何故か自分でも分からないが、朝からカノウを無視していた。自分を見失ってしまったのと、常日頃からのいろんな事へのイライラと、ちょっとしたきっかけが見事に合わさってしまい、なんか人に対しているのが(?)しんどくなったようであった。人と話すのが億劫になってしまった。ちょっと1人でゆっくり考えたかっただけかもしれない。
 しかし、私だけの問題だったのが、カノウに広がり、クラス中の雰囲気に広がって行った。そんなの望んでなかったのに。私とカノウは『けんか』しているように見え、私は『独り』でいるように見えた。そんな時にみんなの本性が判るもので、みんなの心の中の『あるかりは変わり者。嫌いなもののためなら独りにだってなれる変人。』というイメージが沸き上がってきたようである。それから、『高校受かったからいい気になってる』とか、『人を馬鹿にしている』とかの言葉も後になって聞いた。
 でも、やっぱりカノウは違った。『なんでムシすんの!?』と怒鳴ってはいたが、それは本当にあたしの事を想っての事なんだろうと思った。高校とか、独りとか、あの子の友達という概念にとっては何の意味も持たないのだ。その上で、あたしの心の闇(?)を必死に覗こうとしてくれていたのだ。
 放課後、話し合いを兼ねて一緒にカノウと帰った。最初の方はなにも言えずに沈黙が続いたが、『言いたい事は言ってよ!』と言われ、自分の心を整理しないままぶちまけた。そこにいたのは、優等生のあたしでもピエロの仮面をかぶったあたしでもなくて、『あるかり』という自分だった。最終的にいつものロータリーでぶちまけあった。あたしもカノウも泣いていた。最後は2人とも笑顔で別れた。
 
 あたしは、自分が多重人格かもしれないといつも思っていた。従順な自分、お笑い好きな自分、いじっぱりな自分、気紛れでめんどくさがりな自分、強がってる自分、そして寂しがり屋で、みんなに解ってもらいたいと暴れている自分。日替わりで性格が違う事もあったし、頭で考えている事と体が違う風に動くってことも何度もあった。幼少時の体験から来る精神病かも・・と思った事もあった。でもそれは、自分自身から逃げるだけの口実だったような気がする。
 カノウ、「そんなの皆そうだよ。」って言ってくれてありがとう。あんたがいてよかったよ。明日も2人で馬鹿しましょう。

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