蛍を見た。
 花火をやるからいつもの川に来いって向井が言ったから
 行って待ってたけど一向に来なくて
 おいおいどうなってるんだよあいつ、
 わざわざ偶数になるように花火買ってきた
 あたしの立場はどうなるんだよ
 とか思いながらライターで遊んでたら

 ふわ〜っ

 て青紫の光が1つ飛んでいた。
 いや、あれは浮かんでいた。
 灯っては消えて、見失って、また灯ったのを見つけて。
 どうして灯き消しと飛行ということを
 こうも器用に同時にこなせるんだろうと思いながら
 ふらふらとあとを付いて行ってみた。
 頼りなく優しく美しい光。
 捉まえようと手を伸ばすとすいっと行ってしまった。
 私は、そんな光が自分に捉まらなくて良かったと思った。

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